Z1納車初日にエンジンがかからない…その原因は“プラグ被り”でした。
納車初日に、やらかした。
夕飯を食べてたら知らない番号から電話がきた。明日、待ちに待ったZ1が配送センターに届くそうだ。「ついにこの瞬間が来た!」と思いながら当日を迎え、仕事を休んでバイクを引き取りにいった。俺の買ったZ1は震えるほどかっこよかった。
普通にセルを回す。おや?かかりが悪い。「旧車だしな」とチョーク(スターターレバー)を引いて、初爆。よしよし、かかった……ただ、チョークを戻すタイミングを完全に誤った。エンジンは息絶え、それ以降はむなしくセルのキュルキュル音だけが響く。
プラグ被り、確定。
工具も替えのプラグも持っていなかった。仕事休んじゃったし、ここに置いていきたくなかったし。仕方なく2kmの道のりをZ1を押して歩いた。ガソリンスタンドで親切な整備士さんにプラグを洗浄してもらって、ようやく帰宅。旧車の洗礼とはこういうことか、と身をもって学んだ一日だった。
——この記事を読んでいるあなた、同じような経験をしていませんか?あるいは、今まさにセルが空回りし続けていませんか?
大丈夫です。落ち着いてください。原因は分かっています。
【プラグ被りとは何か】——Z1でエンジンがかからない3つの原因
プラグ被りとは、点火プラグの電極にガソリンがついてしまって「濡れた状態」になり、火花が飛ばなくなる状態のことです。濡れたマッチが点かないのと同じ理屈。
Z1の純正プラグはNGK B-8ES。圧縮比8.5:1のDOHC 903ccエンジンに対して、低温型(高い番手)のプラグが指定されています。これは高回転・高負荷でしっかり熱を放散するための設計です。逆をいえば低速・低温域では熱が上がりにくくカブりやすいという特性も持っています。

私のZ1はウオタニを入れているので抵抗入りのプラグを使用。B8RESでギャップが1.1~1.3mm。最初は自分で広げていたものの、最近では1.1mmのギャップ設定されているプラグを買うようになりました。めっちゃ便利ですよ。
被りの原因は大きく3つに分けて考えます。
【診断】プラグが被る原因、3つの真犯人
① スターター(チョーク)の使い方ミス——これが圧倒的に多い
Z1のキャブレター(VM28SC)には、スターターシステムが内蔵されています。現行車でいうチョークではなく、より正確にはスターターエンリッチメントシステム——つまり、冷間始動時にエンジンに極めて濃い燃料(燃料:空気 = 1:1)を送り込む専用の燃料増量装置です。


このシステム、スロットルを全閉にして初めて機能する設計になっています。マニュアルにも明記されています——スロットルが少しでも開いていると、スターターが正常に働かない、と。
問題はここです。
スターターレバーを引いたまま、エンジンが温まり始めているのにチョークを戻さないでいると、混合気は濃いまま4基のキャブレターからガソリンをダバダバ送り込み続ける。プラグはたちまち燃料で濡れる。初爆して「かかった!」と思ったものの、スターターを引っ張ったまま油断した——まさにそれがやらかしの正体でした。
旧車のスターターは、かかったらすぐ戻す。 これが鉄則。
② フロートバルブの不具合——知らないうちにガソリンが溢れている
もう一つ、厄介な犯人がいます。フロートバルブです。
Z1のキャブはフロートボウル内の燃料面を一定に保つことで、混合気の濃さを安定させています。マニュアルでは燃料面の基準をキャブボディ下端から2.5〜4.5mm下と規定しています。ここがズレると、燃料が「溢れ気味」の状態になるわけです。


フロートバルブの弁座(シート)が摩耗していたり、異物が噛み込んでいたりすると、ガソリンが流れ込み続ける。エンジンを止めている間も燃料が滲み、プラグ周辺が濡れた状態で次のスタートを迎えることになる。
「昨日は普通に走ったのに、今日の朝イチでかからない」——そういうケースはたいていここを疑います。一晩でフロートボウルからガソリンが漏れ込んでいるのです。


③ ポイント点火の不調——火花が弱いと混合気は燃えない
Z1は2組のコンタクトブレーカーポイントを使ったポイント点火。左側ポイントが1番・4番プラグ、右側が2番・3番を担当します。点火タイミングはアイドル付近で「Fマーク」に合わせた5°BTDC、回転が上がるにつれてアドバンサーが進角し、3,000rpm以上では最大40°BTDCまで進角します。
ここが狂っていると、点火タイミングがズレた状態で大量の燃料だけが送り込まれる。燃えきれなかった燃料がプラグに残り、被りが発生します。


ポイントギャップの規定は0.012〜0.016インチ(0.3〜0.4mm)。コンデンサーが劣化していると火花が弱くなり、正常なギャップでも着火ミスを起こします。コンデンサーの劣化はテスターで判断しにくく、「なんとなく始動性が悪くなってきた」という感覚的な変化として出てくることが多いです。


【Z1特有の持病】経験則から言う、ここを真っ先に疑いましょう
旧車のプラグ被りには「その個体の歴史」が関係しています。特にZ1で気をつけるべきことをまとめます。
「長期保管明けの個体」は最警戒レベル。
フロートボウルの中に古いガソリンが残ったまま数ヶ月〜数年が経過した車両は、パイロットジェットとスタータージェットの細い通路がワニスで詰まっています。こういう個体でスターターを引いて始動しようとすると、詰まっているがゆえに燃料が来ない→何度もセルを回す→プラグが濡れる→被り、というサイクルに入ります。
フロートバルブは消耗品。
Z1のフロートバルブはゴム製のシートが年々硬化します。「前のオーナーが何年乗っていたか不明」「保管期間が長かった」そういう個体は、フロートバルブを真っ先に交換候補に入れてください。
4本のプラグを外して比較する。
被ったプラグは4本全部なのか、それとも特定の1本・2本なのか。特定の番号だけ被っているなら、そのシリンダーを担当するキャブかポイントに原因が絞れます。 均一に全部被っているなら、スターターの使い方かフロート全体の問題。この「切り分け」が次の手を決めます。


【応急処置】被った今、この場でできること
まず落ち着いてください。必ず直ります。自分でできなくても整備士さんに症状を詳しく説明できれば直してくれます。
その1:スロットルを全開にした状態でセルを回す
これは「フラッド(溢れ)状態からの回復」の基本手順です。スロットル全開にすることで、スターターシステムが切れ(スターターはスロットル全閉でないと機能しない)、かつ新鮮な空気が最大量シリンダーに流れ込みます。10秒ほどセルを回し、プラグを乾燥させる。これだけで回復することがあります。
その 2:プラグを外して清掃する
工具があればプラグを外し、電極をパーツクリーナーまたはガソリンで洗浄して乾燥させる。私がガソリンスタンドの整備士さんにやってもらったのがまさにこれです。きれいになったプラグを戻せば、多くの場合は一発でかかります。もし出先でプラグが被ってしまった場合は、応急処置でプラグの先をライターであぶって乾燥させたりもします。
その 3:次回からの始動手順を頭に叩き込む
Z1の正しい冷間始動手順——スロットルは触らず、スターターレバーを引く→セルを回す→初爆したらすぐスターターを半分戻す→回転が安定してきたら完全に戻す。暖機は2〜3分。この手順を身体に覚えさせてください。トラブルが起きたときは学ぶチャンスです!
【解決の選択肢】自分でできること vs プロに任せること
自分でやれること
- プラグの清掃・乾燥・交換(B-8ES、必ず替えを常備しておく)
- スターター始動手順をちゃんと覚える
- フロートボウルのガソリンを抜いて確認(ドレンボルトを緩めるだけ)
- エアスクリューの位置確認(規定1½回転戻し)
プロに任せたほうがいいこと
- フロートバルブの交換とフロート燃料面の調整(専用ツールが必要)
- スタータージェット・パイロットジェットのオーバーホール(細い通路の確認は熟練の目が要る)
- ポイントギャップ調整とタイミング調整(ストロボライトを使った精密作業)
- キャブ4連同調(バキュームゲージ4本使った作業。素人の感覚では合わせられない)
「応急処置で今日は動いたけど、また同じことが起きる」——そう感じているなら、それはキャブのオーバーホールが必要なサインです。
【それでも直らない場合は】
プラグを換えても、始動手順を見直しても、また被る。そういう個体はキャブの内部、あるいは点火系に根本的な問題を抱えています。旧車の電気系とキャブは、知っている人間が触らないと迷宮入りします。
Z1の4連キャブとポイント点火が分かる、信頼できるショップに診てもらいましょう。
最後に。


納車初日に2kmのロング押し歩きをやった私が言います。車載工具一式と替えプラグはめちゃめちゃ大事です。気持ちよく走れる道路は基本的に近くになにもありません。そしてそういうときに限ってトラブルが起きます(笑)。旧車とはそういうものです。でもそれも含めて、旧車との付き合いは面白いんですけどね。
事前の準備と最低限の知識があれば次の信号待ちでは、余裕の顔で青に変わるのを待てるようになりますよ。
以下の記事ではZ1であるあるなトラブルをまとめています。











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